都史考察

都史等について、気になったことの考察やメモ。文献調査に基づく個人的な意見ですので、特定の組織等の見解ではありません。

09 二人の側近から読む石原都政とトップマネジメント

先月、井澤勇治(2020)『秘書が見た都知事の素顔 石原慎太郎と歴代知事』(芙蓉書房)が発売された。筆者の井澤は2007年6月から2010年3月まで石原知事の秘書部長を務め、その後も報道担当理事(報道官)、生活文化局長として都の要職を務めている。 側近…

08 太田久行『小説都庁』を読んで

07に引き続き、太田久行の美濃部都政に関する著作を扱う。 太田久行『小説都庁』は、太田の自伝的小説である。美濃部都政末期を描くが、その様相を歴史小説家・童門冬二らしく、幕末風の例えで書いている。美濃部知事は、一橋知事(もちろん、一橋慶喜に由来…

07 『美濃部都政12年 政策室長のメモ』から読む美濃部都政

美濃部都政を語る上で外せないのが、童門冬二のペンネームで知られる、太田久行だろう。目黒区役所をスタートに、政策室長にまで上り詰め、美濃部からも副知事候補として名前が挙げられた。後に、美濃部知事の退陣に伴い、自身も都庁を退職する。なお、戦時…

06 もう一つの新東京都庁舎

前回、鈴木知事時代の新東京都庁舎建設について記事を書いたが、ここでもう一つの庁舎案について語りたい。具体的には、磯崎新の案についてである。本稿では詳細は説明しないため、平松剛『磯崎新の「都庁」 戦後日本最大のコンペ』や実際の応募案も参考にさ…

05 鈴木俊一と新東京都庁舎

本日は、鈴木俊一元都知事の命日からちょうど10年に当たる日である。 鈴木知事は、今日でも歴代の知事の中で、実務型の知事として高い評価を得ている*1。実務型の知事を語るときに必ずと言ってよいほど引用される人物であり、今日でも都政史を語る上での最重…

04 都庁における庁議の変遷

都庁における庁議の変遷は、進藤兵(1995)「都庁におけるトップ・マネジメント―庁議方式と企画調整部局の制度史分析」御厨貴『シリーズ東京を考える3 都庁のしくみ』都市出版に詳しい。しかし、1996年以降の庁議及び類似の会議体については、情報がまとま…

03 プロトコール上の東京都知事

大統領制のような日本の自治制度の中で、スウェーデン一国の財政規模に匹敵する13兆円の予算を抱える東京都知事は、「首相より強い権力者」と言われることもある*1。実際に、その影響力においても首相には劣るものの、国内の政治家有数のものである。 しかし…

02 東京都調査部という組織

私の手元にある、東京都が作成した報告書の多くには、「調査部」の組織名が記されている。 調査部の組織基盤は、東龍太郎都政下の1964年8月1日、企画室から企画調整局の組織改編で計画部などとともに誕生した企画調査室に遡ることができる。これよりも古くは…

01 珠玉の名作『広場と青空の東京構想 試案1971』

青山佾『東京都知事列伝』の中で、「今日読んでも輝きを失っておらず、日本の各種計画のなかでも、また東京都政史上の各種計画のなかでも珠玉の名作」と評される、美濃部都政下の『広場と青空の東京構想 試案1971』。とある方にお借りして一読し、大変衝撃を…